どうぶつブログ

(ヒト ∈ 動物)について、いろんなこと書いてます。

【水族館大学②】「日本は鎖国状態」「暗雲が世界と日本(の水族館)を覆っている」元日本動物園水族館協会会長・山本茂行氏 (訂正あり)

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修士課程で観察してた子たち。本文との直接の関係はありません。

 

前回(【水族館大学①】「『イルカは使い捨てでいいですか?』と必ず問われるようになる。問われる前に回答を」作家・川端裕人氏 - どうぶつブログ)の続きです。

 

3月9日に行われた、こちらのシンポジウム ↓ のレポート。

www.wildlife-science.org

 

今回は、パネルディスカッションでのお話をお届けします。

各講演者からの個別のお話よりも、一歩踏み込んだお話が聞けました。

とはいえ、バラバラといろんな話が出てきてわかりにくいと思いますので、最後にざっくりとまとめました。

お時間のない方はそちらをどうぞ。下記の目次をクリックすれば飛べます。

 

※太字強調は、サクラギによるものです。単純に、話のキモかな、とか、何かを象徴してるかな、と思った部分です。

※抜け・漏れは、あります。。

※( )となっているのは、聞き逃した(とわかっている)部分です。

 

※用語等

  • WAZA:世界動物園水族館協会(World Association of Zoos and Aquariums)
  • JAZA:日本動物園水族館協会(Japanese Association of Zoos and Aquariums)
  • JACRE(ジャクレ):日本鯨類研究協議会(Japan Association for Cetacean Research)
  • 前回の記事の最後で書いたように、2015年、JAZAはWAZAの勧告を受け入れ、追込み漁で捕獲されたイルカの取得を禁止することになりました。その後、一部水族館がJAZAを脱退、JACREを立ち上げました。
  • イルカ追込み漁:船で音を出しながらイルカの群れを湾の中へ追い込み、食用の場合は殺す。生体販売の場合は、買い手がそこまで来て購入する個体を選ぶ(食用の漁とは別  →生体販売用と食用を分けることに関しては、WAZAとJAZAの間に大きな齟齬があったことが判明し…。前回の記事の終わり近くに追記しましたので、ご参照ください)。

 

 

コメンテイターのお話

 

内田詮三氏(沖縄美ら海水族館名誉館長)

 

 WAZAというつまらん組織が(追込み漁で捕獲されたイルカの購入をやめないなら除名するぞ、とJAZAを)脅かしてきたわけです。

不届き千万なんですが、(JAZAは)それをOKしちゃった。

 

(この後、各講演者へのコメント)

 

アメリカのほうにはだいぶ負けてるんで。

いっつも言われることですけども

飼育下の繁殖をね、やっぱガンガンやらないとダメです。

そのうえで新しいのを欲しいときは、追込み漁であれなんであれ、欲しいと言うのが( )やり方なんじゃないかと。

私はやっぱり、水族館としては、群れですね、

30頭なら30頭捕獲したのを見せる、と。

いま太地でもね、70頭ぐらい湾内でね、飼育してるってことでね。

単純に船の上から見るんじゃなくてね、生け簀の外っかわからでもいいですから

それこそ個体識別とか、横から見ないとわかんないんでね。

陸上でもそういうことができればいいんでね、

アクリル水槽に20頭とか入れて、

ひとつの水族館で無理なら2、3軒集まって。

 

山本茂行氏(元日本動物園水族館協会会長)

 

ライチョウ(保護)の問題は、イルカ問題とも共通。

このまま行ったら日本はとんでもないことになります。

このまま行ったら野生動物に乗っ取られる(注:増えすぎて手に負えなくなる、ということかと)。

都市生活者と田舎暮らし

(私は)崩れかかった里山、湯治場(だったかな、、?)をまわってる。

自分のものは自分でとり、自分のものは自分でつくるという生活をしてる。

2年で、野菜は全部自分でとれるようになった。

最近は釣りを始めた。

 

2009年から日本動物園水族館協会の会長をしてました。

日本は世界の( )から見ると鎖国状態。

何やってるか伝わってこないし、言うこともない。

(追込み漁で捕獲されたイルカの購入をやめないのであれば除名するというJAZAへの通告は)たしかにWAZAの横暴だとは思う。

でもそういう横暴を受けざるを得ない立場にいたのは日本。

当時(2015年)の荒井(一利)会長の悲痛な判断だったと思う(注:WAZAの改善勧告を受け入れたことかと)

 

暗雲が世界と日本を覆ってきてる。

黙っていても世界的な主流はそういうふうに行く、さらに進んでいく。

WAZAは、世界の動物園反対論者からいかに動物園を守るかを考えてる。

弱いところは切る(だったかな)

弱いところは日本です。

彼らは、飼育そのものに反対する人たちを相手にしてる。

反対する人がなんで力を持ってるかって、政治とつながってるからです。

こういうものに対して、飼育することの意味を発信していかないといけないんです。

もう、「飼育」っていう言葉使うのをやめようという話が出ている。

アングロサクソンがですよ、「パートナー」って言おうって。

 

「飼育はおかしい」ってところに、いかに対抗するか。

日本の特殊性を考えないといけない。

日本には動物園水族館っていう定義がない。

定義がないところで、どうやって発信していくか。

最初から負け戦になるかもしれない。

そういう中で存続するための戦略をつくる。

オールジャパンをつくるしかない。

 

法律・根拠がなければいけない、根拠をつくるしかない。

日本に動物園水族館を位置づけるための法律をつくる。まだまだです。

できるまでは、オールジャパンで行くしかない。

それをやれるのはJAZAしかないと思う。

個々の( )では仕組みとしては対抗できない。

いかに社会に必要なものなのか、豊かな市民生活をつくっていくために必要なのか、支援を得る。

今日のシンポジウムは勉強になったんだけども、なんでJAZAがこの中にいないのか。市民の中に入って行ってやらないのか。

討ち死にせざるを得ない時代に入ってる。

 

司会・亀崎直樹氏(岡山理科大学)

ワシらもそうしたいんだけどなあ、幸島さん(京都大学の幸島司郎氏)

なかなかそうはできないのが世の中ってもんでして…とかって

(この後、とある水族館に言及)

 

内田氏、再び

 

(イルカを)見たいなあっていう(人間の)欲望がありますよね、それに応えてるわけですよ。

強引に連れてきてるわけですからね、

動物に対してはね、悪いことしてると思ってるんですよ。

大部分の人間がやめたほうがいいと思ってるんならね、やめたらいいと思ってるんですよ。

オーストラリアがイルカの飼育をやめるって言ったときの研究者の言葉が印象的で

「ゾウを飼育してもいいのになぜイルカはダメなのか」

(この後ちょっと聞き逃した)

 

それに尽きると思ってます、真理の探究

なんで真理の探究なんてしなきゃなんないのってのは、私みたいなボンクラにはわかんないですが、

大部分がそんなのはつまんねえからやめろって言うんなら、やめたらいい。

水族館の人間が食えるようにしてやめたらいいんで。

動物園と水族館は全然違う、(動物の)入手方法が違う。

JACREってのが立ち上がってますが、JAZAと二つあっていいんじゃないかなって。

 

パネルディスカッション

 

司会・亀崎直樹氏(岡山理科大学)

 

要は、外圧はあるんですね。

タイマイを輸入するのがけしからんと言われてたときにもね、

(反対派の外国人とちゃんと話せば、批判は)おさまってくるんですよ。

最終的にべっ甲の輸入は失敗した。

これは、業界が失敗した。

花魁を呼んだ。

髪に刺さってる、べっ甲が。

その場にいたのが、半分ぐらい女性でね。

私たちが(必死で守ってるものが)あんなところに、って

クリントンに電話するとか言ってるんですよ。

 

イルカ飼うなとか言ってる人にもね、ちゃんと我々の考えてることを伝えていかないとならんわけですよ。

言葉の問題とかいろいろあるかもしれませんけど、ちゃんと言ってけば、逃れられませんかねえ?

 

吉岡基氏(三重大学)

 

声の大きい人の意見が法律になっていくっていう、NPOとかね。

暗雲に対して、ディフェンスをすぐにはできないかもしれないけど、始めないといけないかなと思ってます。

大事なこと

1.飼育環境

2.飼育水準

3.水族館同士でのデータ共有

4.チームづくり(水族館の中、大学、行政)

 

山本氏

 

心強い話がありましてね、産学連携、

いま、法律や社会や文化の専門家がいないんですよ、文系のね。

大学と包括協定結んじゃうっていう(のはどうだろうか)。

 

(JAZAの会長だった)4年間でやったのは(ものを決定するっていう体制にもなってなかった、など、苦労されたお話)…

なんとか、種の保存法(絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律)改正までいったけれども

我々はこれで頑張るから、応援してよっていう広報戦略が必要

 

亀崎氏

 

(「暗雲」について)どういうふうにやられてきますかね?

 

山本氏

 

個々の水族館に対する攻撃でしょうね。

それから訴訟。

( )にダメージを与えていくこと。

 

亀崎氏

 

暗雲は欧米にあるわけですけども… 

 

川端裕人氏(作家)

 

水族館にゾウのはな子(の一件)*みたいなのが来たら、相当な業務的負担。

(*注:井の頭自然文化園にて、何もない狭いコンクリートの囲いの中に1人でいるはな子の姿にショックを受けたある女性が、ブログに写真と記事をアップ。イギリスの動物愛護団体が反応して署名活動を開始、世界中から45万名以上の署名が集まった。「タイの保護区に移して」との嘆願書が出されたが、はな子はすでに高齢で移動は困難。現状を改善するための方策が練られていたが、それらが実現することなく、2016年にはな子は死亡。

来ても不思議じゃない、来ないほうが不思議。

WAZA側としては、10年間ぐらい日本の防波堤になってきたけど、もう無理ってことなんですよね。

イルカ入れるなら、個別に批判を受けてねってことになってしまったんじゃないかなと。

(日本の水族館は)個別に火の粉を受ける用意はあるのかなあと。

 

山本氏

 

戦国時代の軍師の戦略:相手を分散させる

本丸と出城があって、最後は本丸。

我々は受けざるを得ない。

それで(水族館が)朽ち果てていったら、動物園に来ると思います。

 

亀崎氏

 

それは、ダメだねえ、絶対的に水族館があることを大前提にして話してるわけだけども

とりあえず哲学だけはしっかりしておこう、というのがこの「水族館大学」だと思うんですけども

友永先生、チンパンジーでは、何があったんですか?

 

友永雅己氏(京都大学)

 

2、30年前に(動物福祉への機運が)盛り上がったときに、類人猿がフラッグシップになった。

その中でもチンパンジーで成功したのが、いま広がりつつある。

一方で、そもそもチンパンジー飼わなくていいんじゃないのっていう人もいる。

そこに対するディフェンスというか、

「自然からの大使」とか大上段を言うんですけども、

理想論と戦略と両方やる必要がある。

でも上の部分(理想のとこ)が空虚だとどうしようもない。

イルカについては、水産資源だっていう考えをやめないと、生き残っていけないと思う。

やっぱりワイルドライフだっていうふうになっていかないと。

じゃないと動物園とも連携できない。

 

関口雄祐氏(千葉商科大学)

 

(映画『ザ・コーヴ』("The Cove")への反論のような形で書いた著書『イルカを食べちゃダメですか?』について)

知らないものを、「悪い」というスタートで頭に入ってしまうとよくないなと。

日本の文化だ、って(太地町の方々は)言ってますけども。

都市生活者とすごい溝ができてしまう。

昔からこういうものがあったんだよ、って、少なくとも日本の人には知っといてほしいなって思った。

 

太地に関しては、食べ物っていう観点から飼育用の生体へ、海外向けの販売へ移行してる。

暗雲も海外にある。

両方海外なんですよね、こっちの黒雲とこっちの太陽、みたいな。

そこがなくなったら、イルカ漁っていう産業自体もなくなっていく。

そうすると国内にいるイルカを繁殖させるしかない。

いま太地の森浦湾で、海洋牧場をやると

いまは一時的に飼育して販売、ってことだけども、あそこで飼育して繁殖、っていうふうになっていけば。

JAZAとかが関わって大規模に繁殖するっていうのが、水族館が残っていく手段かなと。

野生から入れるっていうのは、どっちにしろ今後なくなっていく。

 

亀崎氏

 

JACREもある程度水産庁の指揮下。

捕鯨文化を守りたいとは言ってますけども、

水産庁に(捕鯨何とか。セクションの名前)っていうのがあるんですけども、予算がどんどん減ってて…

 

参加者からのコメント

 

飼うっていうのが、どうしてそんなに問題なのかなって。

生きている博物館と認識してはどうかと思うんです。

欧米にはミューズィアムがたくさんあると思うんです。

海の中にはこんな素晴らしい世界がある、とか、知ると知らないでは全然違うと思うんです。

子どもたちに、生きている姿を見せるということ。

自分たちも頑張って生きていこう、とか、思えると思うんです。

命ある博物館、というふうにとらえる。

ヒステリックにいろいろ言う風潮があっても、「私たちはこう考えてます」って、言ってもいいんじゃないかなって。

 

亀崎氏

 

全くその通りだと思います。

欧米にもねえ、そういうことをわかる人はいるんです。

ところが、全く一部の人が、暗雲をね…

 

植田啓一氏(沖縄美ら島財団)

 

自然にいるほうがいいんだろうなあとは思うんですけど、

飼ってる以上は、(彼らの幸福を精一杯考えて飼育することが(的なことだったと思う))唯一できること。

理論武装はエライ人が考えてもらえれば…。(パネリストから笑い声)

また数十年たてば、違う流れがあるかもしれないんで。

じゃあ今、イルカの繁殖やったら、WAZAと仲良くやれるんでしょうか、って思う。

水族館がそれぞれの戦いをして多様性に富めば、その中に答えがみつかるのかなって。

水族館動物園は必要悪である、っていうのはずっとあって…。

 

川端氏

 

(野生からの供給をやめて、飼育下繁殖を進めることで)WAZAとは間違いなく仲良くできると思います。

彼らが気にしてるのはこの時点では、追込み漁です。

WAZAも同業者ですから(飼育そのものについて)そこは価値観としては守りたいというのがある。

ドイツでも飼ってるところがあるわけです。

そういう意味では全く問題ないと思います。

 

幸島司郎氏(京都大学)

 

(飼育そのものに反対する人はいるので)いくらよい飼い方をしても、批判は覚悟しとかないといけない、というのはある。

生物にとって繁殖するって言うのは重要なクオリティ・オブ・ライフなので、飼育個体にもそれを保障する。

 

(この後、鴨川シーワールドの勝俣浩氏から少し繁殖の話) 

 

川端氏

 

理論武装って言葉が今日、何度も出てきましたけど、

飼えてなかったら理論武装もへったくれもないんです。

たとえば動物園で、陸上の大型動物が毎年10%も死ぬなんてありえない。
(注:講演の中に、飼育下イルカの死亡率は年間10%前後という話があった)

(イルカは現状では)飼えてないですよ。

(ありえない、というのは)感覚の違いとしか言いようがないけど。

(このままだといずれ)水族館と反対側の立場に立たないといけなくなってしまうかもしれない。

悲しい気持ち。

 

「資源」か「ワイルドライフ」か。

水産行政にがっかりしまくってるんですけども

「獲れない獲れない」って言って、「じゃあ漁期延長しましょう」って、

で、今度はインドネシアでウナギの稚魚を、って。

僕は都市生活者だと思いますけども

問題は水産庁が都市生活者だからなのか、とか

水族館はどういう立場なのか、って

混乱したままマイクを戻したいと思いますけども…

 

亀崎氏

 

今日わかったのは、イルカは飼わなきゃいけないんですよ。
(注:ここはちょっと、今日の話からの論理的つながりはわからなかった)

世界の多くの人たちはそう思ってるんですよ。

伝えていかないと。

で、まあまあイルカをもうちょっと大事に飼っていこうねって。

 

(終わり)

 

まとめ

 

皆さんの見解がすべて一致したわけではもちろん、ないですが、

ものすごーくざっくり要点をまとめると、 

 

  1. (鯨類飼育に対して厳しい)世界の潮流は変わらない、それどころか今後もっとその方向へ進んでいく
  2. そんな中で野生の個体を入れ続けるのは、さすがに無理
  3. 飼育下での繁殖技術を向上させるしかない
  4. 生息環境展示とかもしましょう(イルカの福祉&来館者への教育)
  5. 「イルカは水産資源」っていう考え方はやめないとまずい((保護に値する)「ワイルドライフである」ってならないとまずい)
  6. 飼育そのものに対する批判は今後もなくならないので、覚悟していく必要がある
  7. 飼育そのものを批判する人々を相手にしているのがWAZA
  8. WAZAは動物園水族館の団体なのであって、当然「飼育は是」という価値観は今後も維持する
  9. そんな中、WAZAはずっと日本の防波堤になってくれていたが、世界中で追込み漁、ましてや飼育自体に対する批判と政治的圧力が高まる中で、「さすがにもう守りきれない」となった
  10. 現時点で彼らが問題にしているのは追込み漁だけなので、それさえなくなれば仲直りは可能なのでは?
  11. 日本としては様々なレベルでのチーム体制、連携が必要(オールジャパン)。個別での「ディフェンス」は無理
  12. 飼育の必要性について、「我々はこう考えている」ときちんと伝える、「これで行きます」と言って応援してもらうための広報戦略が必要
  13. 戦略・理論武装と同時に、中身のある理想が必要
  14. ただ、理論武装とか言う前に、陸上の大型動物と比べると、現状でのイルカの死亡率は高すぎ、「飼育できている」と言えない
  15. 結論 by 亀崎氏:イルカは飼わないといけない

 

ふーー疲れた(メモを打ち込むのに)。。いかが思われましたでしょうか…。

個人的には、問題の根っこは「黒船が来た」的なことではないのでは、と思うわけですが…。「いかに『暗雲』に対してディフェンスするか」っていう観点でよいのかどうか。

 

ひとまず、日本のイルカとヒトに幸あれ!と、心より願います。

 

ではでは。

 

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