どうぶつブログ

(ヒト ∈ 動物)について、いろんなこと書いてます。

【水族館大学①】「『イルカは使い捨てでいいですか?』と必ず問われるようになる。問われる前に回答を」作家・川端裕人氏 (追記あり)

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修士過程で観察してた子。本文との直接の関係はありません。

 

(2018年3月16日:WAZAとJAZAの軋轢について、抜けていたことを追記しました。) 

 

3月9日、京都で「水族館大学」という名前のシンポジウムがありました。

 

www.wildlife-science.org

 

日本の今後のイルカ飼育について考えよう、というものです。

 

なんで考えるかっていうと、日本のイルカ飼育は現在、世界から非常に厳しい目を向けられているからです。

そもそも水族館で展示される生き物は、魚などを含め、野生から捕ってくることがとても多い、という実情があります。

動物園では今の時代、そういうことはありません。飼育下で生まれた個体がメインで、そのほかに、野生からの供給が普通だった時代に連れてこられた野生生まれの長生きさん、保護された個体などがいます。

日本の水族館が窮地に陥った直接の理由は、イルカ追込み漁*への批判を発端とする、世界動物園水族館協会という組織との軋轢です。記事の最後に、簡単な解説を載せておきますね。目次(もう少し下にあります)をクリックすると飛べます。

(*イルカ追い込み漁:船で音を出しながらイルカの群れを湾の中へ追い込み、食用の場合は殺す。生体販売の場合は買い手がそこに来て選ぶ)

元々追込み漁への批判はあったのですが、一気に圧力が大きくなったきっかけは、2009年公開の『ザ・コーヴ』("The Cove")というドキュメンタリー映画が、世界の注目を集めたことです。太地町のイルカ追込み漁を残酷だとして非難するこの映画は、2010年のアカデミー長編ドキュメンタリー映画賞を取りました。

日本の水族館で飼育されているイルカは、基本的にこの追込み漁で捕獲されたものなんですね。水族館での繁殖はあまりうまくいっていなくて、新しい個体が欲しいときは、野生から(太地から)調達していたわけです。

一方、たとえばアメリカでは、80年代あたりを最後に、野生からの個体というのは、迷いこんだ個体・レスキューされた個体のみ。ほぼほぼ、飼育下での繁殖でまかなわれています。

それどころか、現在の世界の潮流はもはや、鯨類(イルカ・クジラ類)の飼育そのものを禁止する方向に行きつつある。人間がイルカやシャチを飼うこと自体、「無理がある」ということになってきています。

 

そうした中で、「やばい、これからどうする?(あくまで飼育はやめたくない)」と、ようやく本気で考え始めたのが日本、ってところでしょうか。

 

以下は、シンポジウムのレポートです。

長くなるので、2回に分けます。今回は、講演者の方々のお話。次回は、パネルディスカッションについてアップします。

次回の記事の最後に、パネルディスカッションでの議論のまとめを載せます。

手っ取り早くどんな話があったのか知りたい方は、そちらをご覧いただければ。

 

ただただ書き連ねますので、読み物としては面白くないです(すみません…)。雑ではありますが、関心はあったけど参加できなかった、という方の参考になれば幸いです。

朝寝坊しましたし、お昼ご飯ものんびりしちゃいましたので、全ての講演者のお話を聞けたわけではないです。載せてるのは、大半をメモすることができた4名の方のお話だけ(講演順)。

このほかに、繁殖について、行動の研究について、飼育員とイルカの関係について、大学との連携についてのお話などがありました。

微妙に言葉が違ってるところも多いと思いますし、あくまで私の印象に残ったものなので、内容は偏ってるとは思います。

( )内は基本的に、私の補足や、この記事内でははしょるので概要だけ記載した部分です。太字は私が勝手に強調した部分。単純に、話のキモだったかな、とか、何かを象徴してるかな、と思ったところです。

ではでは、ご関心の向きはどうぞ。

 

各講演者のお話

※私は朝一に間に合わなかったのですが、昨年度と同じく、はじめに亀崎直樹氏(岡山理科大学)から、「イルカを飼育すること自体は前提で」というお話があったそうです。

 

川端裕人氏(作家)

 

北米での鯨類飼育の現状について

Ceta Base という信頼できるデータベースによると、シーワールドグループでは、シャチは1980年、ハンドウイルカは1988年、ベルーガは1992年を最後に野生からは入れていない。

取材に行ったが、繁殖設備・技術すごい。繁殖用のプールは、25mプールより大きいのが5面以上あった。自前のラボも整ってる。ラボがあるのは日本では美ら海水族館だけ。技術についてはあまり詳しくは教えてくれなかった。同業者だったら、もっと教えてくれないかも。

2015年に取材した時点ではまだシャチのショーをやっていたが、ショーというより、科学的な内容だった。シャチの背びれが飼育下だと折れ曲がるとかいう批判に対して、「野生でも曲がってるよ」っていう写真を見せたりしてた。

2013年の『ブラックフィッシュ』("Blackfish")というドキュメンタリー映画(シーワールドのシャチがトレーナーを殺してしまった事件に注目し、シャチ飼育の是非を問う映画)をきっかけにシャチの飼育への批判が高まっていて、2016年にはシャチのショーと繁殖をやめた。

カナダのバンクーバーでは、ベルーガが2頭連続で亡くなったのをきっかけに鯨類飼育への批判が高まり、市議会レベルで紛糾した。

いろいろあったが結局、(水族館の契約先である)公園局が「うちの敷地でそういうことやるのはやめにしてほしい」ってことで鯨類飼育を禁止した(2017年)。今は、江ノ島から引き取った最後の1頭(迷入個体)を飼いきるかどうか、が残された問題

ちなみに、94年には市民投票で動物園が閉鎖されている。96年には鯨類飼育についても問題になったが、このときは存続。

米国のボルティモア水族館は、サンクチュアリ(注:保護のための場所、施設。娯楽施設ではない)をつくると言っている。半野生に帰すためのトレーニングとしてショーのようなこともやるし、客も集めるそう。うまい。フロリダのキーズに作るらしい。

 

日本では…

捕鯨問題と絡めると、ややこしいことになる。

飼育技術、飼育管理、飼育ビジョンの問題に集中してほしい。

井之頭公園のゾウのはな子のようなこと*は、反省しないと。献花台に花添えて終わりじゃないよね。

(*注:何もない狭いコンクリートの囲いの中に1人でいるはな子の姿にショックを受けたある女性が、ブログに写真と記事をアップ。イギリスの動物愛護団体が反応して署名活動を開始、世界中から45万名以上の署名が集まった。「タイの保護区に移して」との嘆願書が出されたが、はな子はすでに高齢で移動は困難。現状を改善するための方策が練られていたが、それらが実現することなく、2016年にはな子は死亡。

飼育下繁殖の確立が大事。それでも、時折新しい血を入れないと、って思うかもしれないけど、たとえば北米では、ハリケーン等での迷入個体で新しい血が入っている。

向こうではすでに、ゴールは動いている。

野生動物を飼育する最低限の作法ではないか。

「イルカは使い捨てでいいですか?」と、必ず問われるようになる。

たぶん今、そう聞かれたら、多くの人が「使い捨てじゃないほうがいい」って言うはず。

問われる前に、回答を用意しないと。

 

司会の友永雅己氏からの質問:バンクーバーで鯨類の飼育に反対したような、「極端な」人々の存在について

川端氏:向こうでは、それほど一般的な意見と離れてないと思う 

 

関口雄祐氏(千葉商科大学)

 

(90年代、太地町で水産庁調査員のアルバイトとして追込み漁に同行していたお話。上のご本にも書かれています)

太地町では、イメージに反して、大型の捕鯨はあまり行われてない。小型捕鯨も衰退。

追込み漁の狙いはマゴンドウ、ツチクジラ、ミンククジラ。

(ここで、追込み漁のやり方の話。船の写真、湾に追い込む方法等)

最近の傾向としては、追込み漁は生体販売がメイン。ハンドウイルカ、カマイルカ。

陸で殺すので、そこを隠し撮りされたりする(イルカ漁反対派の活動について)。

現在は、経済的にも、食料(としてのイルカ)から、飼育(用のイルカ)へシフトしてる。

個人的には、その地の自然や動物を理解するための飼育はOKだと思う。太地、伊豆、鹿児島等。

ここで、「京都に水族館は必要か?」という思考実験をしてみる。

実はアメリカのアリゾナという内陸部(京都よりずっと海から遠い)に、2016年に大きな施設ができた(立派なウェブサイトの写真あり)。

アリゾナも海からの影響を受けているとか言って、教育をうたっている。

それなら京都にあってもよいのかな、と。

吉岡基先生もおっしゃってたように、人の強い興味関心、知的欲求というのがある。

(海外の水族館の、笑顔のイルカトレーナーとイルカが触れ合う写真を見せて)何しろアングロサクソンの彼らもこんな楽しそうにねえ、出てるわけです。

飼う側も飼われる側も、楽しい飼育。

進化というのを考えてみる。

イルカ飼育の歴史は100年以下、イヌの家畜化の歴史は10000年以上。

アカギツネは60年ほどの人為選択でイヌのように人間に懐くようになった。

これ(家畜化)が答えのひとつ…と言うつもりは別にないんですけど。

(長い目で見てもいいんじゃないか、という感じでお話が終わった) 

 

友永雅己氏(京都大学)

 

(チンパンジーの動物福祉がすすめられてきた歴史等について)

いちばん最近まで残った問題は、チンパンジーの「パン君」が有名となった某テレビ番組、そして阿蘇カドリー・ドミニオンの問題(注:パン君の娘のプリンちゃんを不必要に母親から離し、人工保育をしたとされる。また、パン君を含め、エンターテインメントビジネスでの利用(ショー等への出演)への批判も

Support for African/Asian Great Apes(アフリカ・アジアに生きる大型類人猿を支援する集い、通称SAGA)では、声明を出している。

SAGAの論理は、

  1. 絶滅危惧種であるチンパンジー(の利用)は、希少種の繁殖と研究、動物園における教育的展示の対象 に限定すべき
  2. 極端な擬人化によって人々の間にチンパンジーについて誤った認識が広まると、人々が大型類人猿の保全のための適切な行動をとることの妨げとなる
  3. チンパンジーの心身の健全な発達のためには、幼少期に母親から離されたり、長距離移動・不自然な姿勢や行動を伴う撮影など、多大なストレスを被る状況に置くことは避けるべき

SAGA的な視点が、イルカにも必要なのかってこと。

ハンドウイルカやシャチは一応、絶滅危惧かは不明なのだけど

「資源」からの脱却をしないといけない(資源として見ることをやめないといけない)。

最近では行動展示というのが増えている。

それと対になるのが生息環境展示だが、イルカではほとんどやられていない。

何もないプールをぐるぐる泳いで、食べたものを吐いたりまた食べたりしてる。

そんなので、自然の中で暮らす彼らをイメージできるかということ。

 

亀崎直樹氏(岡山理科大学)

 

(大雑把に言うと、人類はウミガメを食べてきた、人類の歴史はウミガメとともにあった、というようなお話)

寿司屋の親父の昔話(沖縄の方のどこかだったか…?すみません聞き逃した)

島の子供たちが海岸に集められる。

ウミガメに包丁を見せると、涙を流す。

それをかわいそうだ~とか言いながら殺す。

昔からこういう、命を大切にするーみたいのがあったわけですね。

 

かつての種子島

シャリンバイの花が咲く頃、「浦祝」という儀式をやる。

アカウミガメを獲り、解体し、酒を呑む。

獲るときは、甲羅の下の方を突く(大きなカギの付いた道具の写真あり)(突く場所が悪いと、甲羅が使い物にならなくなったりする)。

甲羅は、畑仕事とか様々なところで使われてた。ただ、記録には残ってない。

心臓は恵比寿神社に奉納。肉はみんなに分配。(昭和47年の写真)

最近の漁師は食べてくれなくなって、「そんなことするか!」とか言われる。

漁師がチョーク持って来て、甲羅に「元気でね」とか書いて、放すわけですよ。「おまえなんやねん!」みたいな。

 

全国にカメの墓ってのが残ってる。

悪い関係じゃなかった。

(1970年頃以降)理想的な共生的な時代は終わった。

まず出てきたのは冷蔵庫、ストックできるもんだからどんどん獲っちゃう。

交通機関の発達、東京では卵が1個1000円(だったかな…大きく違ってたらすみません、、)で売れた。  (卵泥棒の話などあり)

 

その後、「ウミガメジジイ」が出てきた。

ウミガメの数が回復してきたのはこの人たちのおかげと思ってる。

彼らが亀の産卵を守る(人が寄ってくるから、下がれって言ったり)。

産まれた卵、そのあと子亀も守る。

(ここで世界各地のウミガメジジイたちの写真など)

大変なんですよ、研究者がこんなことやりたいって言ったら( )しないといけなかったり、(そいつらが)怪我したり、行政が来たら相手したり、開発やりだしたらコラーとか怒りに行ったり。

 

シカ、サル、そして最近では「イルカ問題」―

護りすぎたところがある、はっきり言って。

(昔は適度に獲ってたから、いいバランスがあったけど、今は護りすぎて増えすぎたという話)

 

「生態系型人類」と「都市型人類」ってのがいると思う。

野生動物との関わりは「生態系型」がリードすべき。

行政も、研究者も、「都市型」なのが問題。

 

(終わり)

 

※この後、沖縄美ら海水族館名誉館長の内田詮三氏、元日本動物園水族館協会会長の山本茂行氏の2名のコメンテイターを加えて、パネルディスカッションが行われました。

近いうちにそちらもアップします。

 

(※2018年3月16日、アップしました ↓)

www.doubutsu.co

 

パネリストの皆さんのやりとりには、普段なかなか表に出てきづらいことも垣間見えて、興味深かったです。

 

【解説】世界動物園水族館協会と日本動物園水族館協会との間で起きたこと:倫理規範違反、改善勧告、除名通告

 

世界動物園水族館協会(World Association of Zoos and Aquarium, 通称 WAZA)という国際組織があります。世界中の動物園・水族館、そしてそれらが所属する各国の組織が会員として名を連ねています。

日本には日本動物園水族館協会(Japanese Association of Zoos and Aquariums, 通称 JAZA)という組織があり、WAZAの会員となっています。

2004年、WAZAは台北での会合において、高度な動物福祉等を推進することを決議するとともに、動物に苦痛を与える捕獲(追込み漁を例として記載)を規制する倫理規範を制定しました。

2006年、WAZAは、JAZAが追込み漁で捕獲されたイルカの購入を是認し続け、この倫理規範に違反しているとして、改善勧告を出しました。

そんな中、2009年に映画『ザ・コーヴ』が公開、翌年にはアカデミー賞を受賞。

(追記)2009年9月、WAZAとJAZAは、生体販売用の捕獲と食用の捕殺を分けて考える内容で合意していました。が、実施期間などについて双方の認識が異なっており、結果的にはJAZAがWAZAの認識していた形での合意を守らない形に。2014年にその齟齬が明らかになり、8月の会談にて改めて話し合いがもたれましたが、その後も追込み漁からのイルカの入手について合意に至らず、同年11月、WAZAはJAZAの会員資格停止を検討している旨を通知しました。(追記ここまで)

2015年4月、WAZAは、JAZAに改善が見られないとして、全会一致でJAZAの会員資格停止と除名を決定。

同年5月、JAZAはWAZA加盟継続の賛否を問う会員投票を行い、残留票が多数派に。これを受け、JAZAはWAZAの改善勧告を受け入れました。

その後、一部の水族館がJAZAを脱退、日本鯨類研究協議会(Japan Association for Cetacean Research, 通称JACRE)という新しい組織を立ち上げました。

 

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